【追悼】チェスター・ベニントンという奇跡のボーカリストについて
奇跡のボーカリスト
今日は奇跡のボーカリスト、チェスター・ベニントンを追悼する記事を書きます。僕がチェスターの歌声を知ったのは、全世界のロックファンに新たなる音楽性の到来を突きつけたLinkinPark『HYBRID THEORY』という衝撃作にて。今から16年前。
以降、僕はLinkinParkの虜となり、CDやDVD、雑誌、Youtube、ライブなどから沢山の感動をもらい続けてます。当ブログ5月16日のエントリでも日本公式ファンクラブ『LP Underground Japan』のオープンと7thアルバム『One More Light』の発売ニュースをついつい紹介してしまう程、未だLinkinparkに心酔中です。
そんな折、チェスターの訃報。41歳。あまりに早い旅立ちです。彼の死を受けて、彼の音楽仲間、世界中に点在するファン達から哀悼の意が捧げられています。ツイッターやYouTubeのコメント欄を見ているとチェスターの偉業と人間性に魅せられている人の多さ、喪失感の深さが浮き彫りに。本当に奇跡のボーカリストが失われたのだと痛感します。
しかし、僕達ファンには楽曲や映像が残されているので、これからも作品の中で、心の中でチェスター・ベニントンは生き続けてくれるでしょう。本記事は改めてチェスターの魅力を振り返りたいと思います。お付き合いいただける方はどうぞ読了くださいませ。
優れた二面性
まず最初にチェスターのボーカルスタイルを僕なりに考察します。二面性の精度が高過ぎるのでファンでも好みが分かれるところではないでしょうか。伸び伸びとした美声によるクリーントーン、落雷のようなシャウトを織り交ぜたディストーションボイス。
楽曲の持つ世界観や意味に対して忠実に声色を変化させるスタイル。これが抜群にうまい。楽曲の持つ喜怒哀楽をブラッシュアップさせるので聴き手を共感へと導いてくれます。一つの声色を極めるだけでも難儀なのに、底知れぬ才能です。LinkinPark初期ではバランス良く二面性が表現されていて、中期以降では美声がさらに研ぎ澄まされていきます。
『Crawling』や『Numb』といったリンキン節炸裂のパワーバラードはチェスターの優れた二面性が存分に発揮されています。モンスター級の表現技術。
『Crawling』
『Numb』
繊細と大胆の両立
チェスターの表現は「剛と柔」「静と動」「弱さと強さ」「絶望と希望」といった両極端の対称的なエッセンスがひとまとめに歌い上げてられているという特徴があります。
彼は青少年期に虐待を受けたり、いじめられたりの経験があり、そのトラウマによってアルコールや薬物へ依存する側面があったようです。それでも音楽を志して自らの道を切り開いていく強さもありました。
また、最初の結婚は22歳の時と早く、LinkinPark加入前だったので、音楽の道を諦めて一旦は就職。その後LinkinParkに加入し、仕事を辞めて引越し、挑戦の毎日だったそうです。だいぶ苦労人です。ワーナーとの契約にいたるまで42社のレーベルにアプローチしたそうです。その後の活躍はご存知の通り。デビュー作で一気にスターダムへ。
しかしサクセスしてからも健康に難あり、制作やツアーでは体を壊すこともしばしばあったそう。長い間、体の弱さには苦しんだようですね。ライブでのパフォーマンスを見る限り『体が弱い』とは無縁の兄貴に見えるので、裏事情はわからないものです。
チェスターの生い立ち、生き様は常に『絶望と希望』の合わせ鏡であり、必然的に彼の歌声には繊細さと大胆さが共存するのでしょう。そういった背景によって人生に乗り越えたい壁がある人達を奮い立たせているのではないかと思います。
「もう諦めた」と叫び続けながらも他者に救いを求めている『Given Up』
今となっては解釈に困る『Leave Out All The Rest』
まるで自分が消えることを予期するようなリリックが切ない。
キャラクター
あくまでもファン目線での人物像に過ぎませんが、特徴を挙げてみます。本当に魅力的なボーカリストです。
カリスマ性抜群フロントマン
動き回って暴れて良し、スタンドマイクで歌い上げて良し、オーディエンスにもみくちゃにされて良し、サビの入りでハイジャンプ良し。ステージ上ではカリスマとしての存在感が爆発しています。なお、シャウト時の首筋は世界一。
お茶目さん
タトゥーぎっしりの怖い兄貴かと思いきや、悪ふざけが目立つお茶目さん。ステージ外の振る舞いがマジ可愛い人。大体ケラケラニヤニヤ笑ってる気がします。
LinkinParkはリハーサルで自分達の曲をリアレンジして爆笑していることが多々あります。最近では『Heavy』をレゲエにしたりニューメタルにしたり。毎回チェスターはノリノリ。以下の動画では5分23秒〜『Numb』を陽気に歌い上げるチェスターの姿が楽しめます。
端の人
暗黙の了解でフロントマンは中心に立ち位置をとるものですが、プライベートフォトや雑誌のインタビューなどでチェスターは不自然に端にいることが多いです。謎。ガンガン表に出るよりも、控えめな位置が落ち着く人なのかもしれません。下画像では左端でニヤついています。
愛に満ちた人
今回の訃報を受けてメタリカのラーズ・ウルリッヒは以下のようにツイート。
Gracious, kind & humble. A rare combination in Rock & Roll. Deeply saddened... pic.twitter.com/cVtNEzrjHD
— Lars Ulrich (@larsulrich) 2017年7月20日
優しく、親切で慎ましい。ロックの世界では珍しい組み合わせ。
東日本大震災の時、チャリティーコンピ『Download to Donate:Tsunami Relief』がリリースされ、LinkinParkは『Issho Ni』という楽曲で貢献。この活動で5000万円を超える寄付があったとのこと。バンドメンバーも石巻市の小学校を訪れました。チェスターは防災ずきんをかぶり、子ども達と触れ合い、元気付けたそうです。
このボーカリストが突き抜けているところは人間性なんじゃないかと思います。何かと子どもだったり仲間だったりに情を注ぎ込むんですよね。格好いい漢。奥さんのタリンダのツイートでは『良きパパ像』がいたるところに。愛に満ちてる人。
I love MY FAMILY❤️ @ChesterBe pic.twitter.com/qSNmyzyUMS
— Talinda Bennington (@TalindaB) 2016年3月10日
キャラクターまとめ
ステージ上ではカリスマ的フロントマンであり、ステージ外ではお茶目で陽気なおもしろ人間。仲間達からも認められる人間性も備えた家族愛のある人。良く端にいる。首筋の浮き出しは世界一。最高のボーカリストです。
向上心とか開拓精神とか
雑誌やウェブマガジンのインタビューでは成功者のおごりが感じられず、常にハングリー、常にリスクを取ろうとする姿勢が読み取れます。チェスターは制作や活動において冒険心しかなかったのでしょう。
安住の地でパフォーマンスしたくない
デカいフェスのメインアクトに抜擢された翌日には小さなライブハウスでオープニングアクトだったこともあるよ(その後爆笑)
困難には立ち向かうべき、人は自分の運命を変える力がある
過去に高評価を受けた内容とは違う内容で勝負したい
などなど。現状維持や停滞を嫌い、いつでも課題を持っている人なのだと推察できます。まさにいつでも『Breaking The Habit』ですね。
『Breaking The Habit』
成功しても固定観念に縛られない開拓精神。「安住の地でパフォーマンスしたくない」的な発言が多過ぎて、彼のアーティスト魂が地位や名誉の上に成り立っていない純粋なものだと証明していると思うのです。だからこそもっと聴きたかったな。
『One More Light』
さいごに
自殺という選択をした奇跡のボーカリスト、チェスター・ベニントン。成功と名声を手に入れてからも、自分のメンタル部分については不安定な発言を繰り返していました。世界の見え方は本人しか知り得ない。彼の最期の心境は永遠にわからぬものでしょう。
ただ間違いなく言えることは「ありがとう」のような感謝の言葉です。日本でも沢山の人が影響を受けて、希望を受け取りました。
伝説となったボーカリストよ、どうか安らかに。